インタビュー

社会学科

「観光」の研究を深めるために必要な知識を学ぶ環境が整っています
沢田 史子 教授

Interview

先生の専門の学問分野はどのような学問ですか

観光学です。観光学は観光にかかわる社会現象を研究対象としており、学際的(複数の分野にまたがっている)で比較的新しい学問分野です。私はその中でも、情報の観点から観光を捉える観光情報学が専門分野です。これまで、観光情報サイトの評価法やクチコミデータを用いた旅行者モチベーションの分析、観光旅行におけるSNSへの投稿分析などの研究を行ってきました。また、学生と一緒にゆるキャラを活用した地域資源マップの作成や、観光モデルコースの開発などの取り組みも行ってきました。

沢田 史子 教授

Interview

専門分野の面白さはどんなところですか

日本では人口減少によって国内旅行人数が減ることが懸念されています。宿泊旅行を阻害する要因は様々ですが、高齢者では健康上の理由が最も高くなります。70歳以上の高齢者は2048年頃までは人口が増加します。高齢者の旅行回数を増やすことができれば、国内旅行人数を増加させることも不可能ではありません。現在、高齢者の観光行動に関する研究をしています。高齢者が観光できる力を「観光行動力」と定義し、兼六園で心拍数や歩数、疲労度などを計測する実験ツアーを実施しています。実験に協力していただいた方々から、「歩く事に自信が持てました」「体力のあるうちに少しでも旅行を楽しみたい」などのコメントをいただきました。このように、実際に起きている観光の課題に対して、どのような解決方法があるかを考えて、調査・分析や実験をすることがとても面白いと感じています。

Interview

ゼミの進め方や特徴などを教えてください

ゼミの学生が「金沢イケメン観光」というユニークなプランを作り、全国旅行業協会が実施した「学生がつくる石川県の着地型旅行プランコンテスト」に応募したことがあります。ターゲット(想定する対象者)は、金沢とイケメンに興味がある20歳代と設定しました。ふざけているようですが、実によく考えられたプランです。金沢を訪れる20歳代は、初めての人が多いことがわかっています。そこで、定番観光地を盛り込んだコースにしました。それだけでは全く目新しさがないのですが、それぞれの場所で出会えるイケメンを探し出し、写真入りで紹介しました。その結果、オリジナリティが高く評価され、最優秀賞に選ばれました。研究にはオリジナリティが必須です。ゼミでは観光に関連する内容であれば、自分がやりたいと思ったテーマで自由に研究してもらいます。独創的で、面白い、なるほどと思える研究テーマを期待しています。

沢田 史子 教授

Interview

地域の課題と学びがどのようにつながっているかを教えてください

オーバーツーリズムという言葉を聞いたことがありますか?旅行者が観光地に集まりすぎて、地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼす現象のことです。オーバーツーリズムは地域住民だけではなく、旅行者の満足度も著しく低下させてしまいます。この対策の1つとして、分散があります。繁忙期に集中する旅行者を閑散期に誘導したり、早朝や夜間といった通常は活動しない時間帯に観光を促すことなどが重要であると言われています。金沢も繁忙期になると多くの旅行者が訪れて、ゆっくり観光できない状況になりつつあります。例えば、「地域と観光」という授業では、地域における観光の課題をフィールドワーク(現地調査)を通して把握します。そして、分散観光などを実現させるための具体的な対策を考えます。

Interview

大学生に学んでほしいこと、アドバイスなどをお願いします

観光学は学際的な学問であることから、様々な分野の知識がとても役に立ちます。例えば、私が現在取り組んでいる研究の目的は、高齢者が自身の観光行動力を知ることが旅行をする動機付け(旅行の推進)になるかを明らかにすることです。このため、高齢者の気持ちの変化について社会学部の心理学を専門とする先生と共同研究をしています。社会学部には、心理学の他にも、社会学、経済学、経営学、情報、福祉、環境など観光の研究を深めるために必要な知識を学ぶ環境が整っています。ぜひ、幅広い知識を身につけて、沢田ゼミで一緒に楽しい観光の研究をしましょう!

沢田 史子 教授