インタビュー

社会学科

若い世代がどのようにすれば選挙に関心を持ち、投票に参加するようになるのかを研究しています
若山 将実 教授

Interview

先生の専門の学問分野はどのような学問ですか

政治学です。政治学は、政治に関わる様々な制度や社会現象を研究対象としています。

政治学の歴史は古く、古代ギリシャの時代にまで遡ることができますし、その具体的な研究対象は国家、政党、政策、選挙、行政、地方自治、民主主義、独裁制、国際政治、そして戦争など非常に幅広く、また研究手法も多岐に渡ります。

私は、その中でも主に現代の民主主義諸国の選挙に着目し、日本やイギリスで小政党や新党が国政選挙で支持を伸ばした要因や、有権者の投票参加や投票行動にどのような要因が影響をしているのかについて仮説を立て、調査や実験データの分析から検証するという科学的方法に沿った研究を行ってきました。

最近取り組み始めたものとしては、有権者の属性(出生順位、年齢、そして朝型・夜型の生活スタイルなど)が選挙での投票参加に与える影響に着目した研究があります。

Interview

専門分野の面白さはどんなところですか

自分が生活している社会や国家が実際にはどのように動いており、そしてどのようにすれば適切に運営されるのかを考えることができる点にあると思います。

例えば、民主主義は、選挙を通じて選ばれた政治家が法律を作り、政府が政策を展開することで個人や地域の課題を解決することを目的とした政治体制です。しかし、政府がいつも有権者の望んだ政策を展開してくれるとは限りません。近年、日本では選挙で投票に行く有権者が若い世代を中心に大きく減少しています。

先行研究によると、政治家は投票に行かない有権者よりも、いつも投票へ行く有権者の望みに沿った政策を展開する傾向があります。このままだと、政治家はますます多くの若い世代の有権者にとって望ましくない政策を実施するようになってしまうかもしれません。

そこで現在、私は若い世代を中心とした有権者がどのようにすれば選挙に関心を持ち、投票に参加するようになるのか、調査や実験を通じて研究を進めています。

Interview

ゼミの進め方や特徴などを教えてください

ゼミの最終的な目標は、ゼミ生が自身の研究テーマに関する卒業論文を作成できるようになることです。そこで私のゼミでは、まずゼミ全体で研究テーマを決め、関連する学術論文や専門書を講読し、仮説を立ててデータを収集して検証するという科学的な研究の手続きをみんなで体験してもらうようにしています。

また、休み期間中には県外の大学と合同ゼミ合宿を行い、そこで研究発表を行うという機会も設けています。このようにゼミ全体で科学的な研究の流れを体験してもらった後、ゼミ生各自で研究テーマを見出し、最終的に卒業論文を作成するための研究を進めていくことになります。

重視しているのは「何を明らかにしたいのか」という研究の問いを明確にすることです。そのためには先行研究をしっかりと読み込むことに加え、現実の政治から研究テーマに関するヒントを得ることも大切です。

そのために、ゼミ生の皆さんには日々の政治・社会のニュースに注目してもらうのに加え、政治家を対象としたインタビューを行ったり、政治の現場(選挙、議会)を観察するなど、学外でのゼミ活動も重視しています。

Interview

学びが社会に出てどのように役に立つかを教えてください

政治学は、政治家になるためでもない限り社会に出ても何の役に立たないのではないかと人から問われることがあります。こうした問いかけに対し、私はいつも次のように答えるようにしています。

政治を「人々の利益を調整することで関わる全ての人がある程度納得できる決定を行うこと」であると定義すれば、社会のありとあらゆる場面で政治は存在します。だとすれば、国、自治体、企業などの組織、そして個人間で政治的な決定がどのように為されるのかなどの政治学の考え方を学ぶことは、無人島でただ一人生活するのではなく、社会に出て他の人々と関わりながら生活していく以上、決して無駄ではないと思います。

また、政治学に限らず、多くの学問で共通する科学的な研究手法を大学で学ぶことは、社会に出て課題解決のための論理的に考える力を身に着けることができます。

Interview

大学生に学んでほしいこと、アドバイスなどをお願いします

政治は、個人の心理や行動、社会の形成、経済の発展など、政治以外の様々な社会現象にも大きな影響を与えます。そのため、社会学、心理学、経済学など様々な隣接学問の考え方が政治学の分析に取り入れられ、現在に至るまで発展してきました。

個人、地域、そして国家の課題解決のためには、他の隣接学問の知識も必要です。例えば、近年各地で増加している外国人住民と日本人住民との間で生じている様々な問題を解決するためには、多文化共生に関する社会学の知識が必要となってきます。このため、私は現在、同じ社会学部の社会学を専門とする先生と共同で地方自治体が展開する外国人住民を対象とした政策の研究も進めています。

社会学部では、前述の社会学、心理学、経済学のほかにも、経営学、情報学、社会福祉、環境など政治と関連する現象を研究するために必要な知識を学ぶことができます。大学では、それらの幅広い知識を学ぶことで視野を広げ、将来社会に出ても役立つスキルを身に着けることができます。

近い将来、皆さんと一緒に学べる日を楽しみにしています!