インタビュー

社会学科

大学での学びをもとにして、大学卒業後も学び続けてほしい
赤羽 由起夫 准教授

Interview

先生の専門の学問分野はどのような学問ですか

社会学です。社会学のなかでも社会病理学・犯罪社会学を専門としています。病理や犯罪というと精神病理や犯罪心理が思い浮かぶことも多いかと思いますが、心理学ではなく、社会学です。まとめて社会問題の社会学と言い換えてもよいでしょう。

私の研究は、凶悪犯罪報道における理解不能な犯行動機の研究です。たとえば、「心の闇」や「誰でもよかった」などの理解不能な犯行動機について、これらがどのように報道されたのかを研究しています。犯罪報道の研究ですので、犯罪そのものではなく、犯罪に対する人びとの社会的反応の研究ということになります。

赤羽 由起夫 准教授

Interview

専門分野の面白さはどんなところですか

社会学の面白さは、「社会」という水準から見た世界が、「個人」の水準から見た世界とは違ったものになるところです。

たとえば、犯罪を例にとってみれば、個々人の素朴な実感としては「犯罪が増えた」と思っていたとしても、社会的(統計的)には犯罪は減っているということがしばしばあります。また、犯罪は、被害にあう個人にとっては有害でしかないですが、社会全体から見ると、人びとが規範の重要性を再認識できるなどの点で有益な結果をもたらすことがあります。

このように、社会学の見方を学ぶことで、世界の違った側面を垣間見ることができます。

Interview

先生が専門分野を学ぶようになったきっかけ、出会い、エピソードをおしえてください

きっかけは2つあります。

1つ目は、少年犯罪報道です。とりわけ、1997年の神戸連続児童殺傷事件や2000年の西鉄バスジャック事件などの「キレる17歳」による犯罪の報道が強く印象に残っています。このときに「心の闇」という言葉が流行しました。そのころ私は、一部の凶悪犯罪だけを過剰に報道するマス・メディアの姿勢に疑問を感じました。

2つ目は、エミール・デュルケムの『自殺論』を読んだことです。この本は有名な社会学の古典なのですが、自殺を個人的な苦悩からではなく、社会的な原因から解き明かしていったものです。この本から私は、社会学の論理の力強さを感じました。

Interview

ゼミの進め方や特徴などを教えてください

ゼミで目標としていることは、チャールズ・W・ミルズの言う「社会学的想像力」を身に着けてもらうことです。社会学的想像力とは、個人的な問題と社会的な問題との関係を把握することを可能にする想像力のことです。

ゼミでは、ゼミ生の皆さんが自ら選んだテーマを研究して、最終的に卒業論文・ゼミレポートにまとめてもらうことになります。そのために、個別の事例からその社会的背景を探るための理論や、実際の事例研究の文献を輪読し、ゼミ生の皆さんが無理なく社会学的想像力を身に着けていけるように心がけています。

赤羽 由起夫 准教授

Interview

学びが社会に出てどのように役に立つかを教えてください

問題の発見、把握、解決に役立ちます。ここで言う問題は、もちろん社会問題ということになりますが、それはかなり広い意味です。つまり、個人の心理的問題に還元できないような制度や人間関係の問題はすべて社会学の射程の範囲内です。

社会病理学・犯罪社会学では、文字どおりの意味で私たちの身の回りにある問題の発見、把握、解決に役立つ知識や方法を学ぶことができます。また、インタビュー、アンケート、公的統計や文書資料の調査などの社会調査法も、問題の発見、把握、解決に役立ちます。これらだけでなく、社会学は全体として、身の回りにある問題に対する感受性を養うことに役立つと思います。

学び方について1つアドバイスをするとすれば、ある程度まとまった文章(本、記事、論文)を読んでほしいです。なぜなら、知識や論理的思考を身に着けるためには、ある程度の長さの体系的な文章を読む必要があるからです。

そもそも大学での学びの目標の1つは、自分で学び続けることができる人を育てることであると思います。そして、自分で学び続けるためには、文章の読解力が必要です。講義もゼミも、そういった力を身に着けるためにあります。

大学での学びをもとにして、大学卒業後も学び続けてほしいです。

赤羽 由起夫 准教授