インタビュー

社会学科

社会学部では経済学や政治学、心理学など様々な専門科目を学べます!
井上 克洋 准教授

Interview

先生の専門の学問分野はどのような学問ですか

お金を扱う経済学という分野は、大きく分けると理論、政策、歴史に分かれますが、私の専門は歴史、即ち経済史という分野になります。経済史というとピンとこないかもしれませんが、経済とは生活そのものですので、私たちがお金を通してどのように生きてきたかを歴史を通して学ぶ学問だと思ってもらえると分かりやすいのではないでしょうか。例えば、私たちが日ごろ使っている砂糖も昔から普及していたわけではありません。インド原産のサトウキビを大航海時代に利益獲得を求めた欧州人達が黒人奴隷労働と共に西インド諸島に移植し、それが欧州へそして日本へ運ばれて私たちの食卓にのぼるようになります。この砂糖の背後に流れるお金の流れや社会変化の偶然必然を解き明かしていくような学問が経済史という分野になります。

井上 克洋 准教授

Interview

専門分野の面白さはどんなところですか

「目から鱗が落ちる」という表現があります。語源は新約聖書にあるそうですが、何かのきっかけで急に物事の実態などがよく見え、理解できるようになる例えとして使われます。経済史を学ぶと、こういうことがたびたび起きます。例えばこれは経済史というよりも社会史という分野に近いお話ですが、中世ヨーロッパでは「子ども」という概念は存在していませんでした。「?」と思われるかもしれません。でもアリエスというフランスの研究者によると、当時「子ども」は「小さな大人」と理解されていたというのです。ですので、小学校くらいの年齢で飲酒も親密な恋愛もOK。因みに乳幼児は動物扱いでした。保護する対象として子どもと大人が区別されるのは、近代的な学校教育制度が誕生してからだというのです。私は「なるほど面白い!」と感じましたが、皆さんは如何でしょう?

Interview

先生が専門分野を学ぶようになったきっかけ、出会いエピソードをおしえてください

私が学生だった80年代末は、バブル経済絶調の時代でした。給料やボーナスはうなぎ登りで、街は高級外車で溢れかえり、何十億円という美術品が飛ぶように売れました。恐らく日本史上、最も景気が良かった時代だったと思います。こんなに豊かな時代に、過労死が社会問題となりました。景気が良すぎて仕事が終わらず、懸命に仕事をこなしているうちに過労死するという事件が多発したのです。そこまでして日本人はなぜ働くのか? この謎を追及していくうちに、答えが資本主義の構造やその歴史にあることが朧気ながら見えてきました。自分が就職した際に過労死しないですむよう、学生の間にその謎を解き明かしたい!と考えたことが経済史を学ぶきっかけとなりました。

Interview

学びが社会に出てどのように役に立つかを教えてください

大学での学びは、高校とは大きく異なります。最大の違いは、問題に対す正解が1つではなく複数存在することでしょう。例えば、景気をよくするにはどうすればいいか?という問に対して、消費税を下げるや、規制を緩和する、金利を下げるといった解答は、経済学的にはいずれも正解といえます。会社でも、新製品の売り上げをあげるにはどうすればいいか?という問にはいくつもの正解が考えられるでしょう。しかし予算や人員は限られていますので、いくつかある正解の内、どれがベストであるか上司に説明できなければなりません。そのためには、市場のこと、製品のこと、ライバル会社のこと、販売のタイミングなど、いろいろな要素を考慮して判断を下す必要があります。こういう総合的な力を養うのが大学での学びであり、ゼミでの学びとなります。本学の社会学部では経済学や政治学、心理学など様々な専門科目を学べるので、総合力をつけるには最適の環境だと思います。

井上 克洋 准教授

Interview

大学生に学んでほしいこと、アドバイスなどをお願いします

大学の授業は大きく分けると、講義と演習に分かれます。講義は座学であり、専門知識を取得することが主たる目的です。一方の演習は、講義を通して得た知識を活用して、議論をしたり文章にまとめたり発表したりと実践的経験を積むことが目的となります。この講義と演習との両輪のバランスは非常に重要ですが、それ以上に重要なのはそれを踏まえつつも自分自身がどう生きていきたいか、そしてどのような社会を構築していきたいかを考えていくことだと思います。残念ながら授業では、直接それを教えることはありません。自分自身で模索していくものだと考えるからです。本学が大事にしてきたキリスト教的価値観はそれを考える上でのヒントになるかもしれません。学生には、友人、家族、アルバイト先や地域社会、教員などとの4年間の交流を通して、じっくり考えていってもらいたいと思います。

井上 克洋 准教授