自分と向き合い、互いに磨き合う「共鳴」の歓びをー
Interview
先生の専門の学問分野はどのような学問ですか
いきなりカタい質問なので、答えもちょっとカタくなりますよ(笑)。
子どもたちの心には、その子が主人公の「物語」があります。それを豊かに紡いでいくお手伝いとしての「物語論的アプローチ」の研究、幼児教育と小学校教育との連携や接続の在り方についての「保幼小連携・接続」の研究、持続可能な社会をつくっていく子どもを育成する「ESD(Education for Sustainable Development)」の研究をしています。教育哲学と教育実践を行き来する研究です。
現場でいうと、幼児教育における遊びや、小学校の生活科、社会科、総合的な学習の時間等の「保育・授業」実践が研究のフィールドということになりますね。
はい、カタいのおしまい(笑)。
Interview
専門分野の面白さはどんなところですか
なんと云っても、子どもたちの心にふれ、それを豊かにするイメージを冷静に組み立てていくことにあると思います。
子どもたちは、思いや願いをもって何かをします。そも、「学び」というのはつまるところ個々人のもので、学校で一斉に「学んで」いるように見えても、それぞれが価値を見いだすことは異なります。「推し」は皆違うでしょう(笑)。
私の専門分野は、この「学習者主体」という原則に根ざす点で共通します。
なお、学習者主体は、個々が何かを好きに学んでいればよい、ということとは違います。学校という場所は、子どもが向かう先を共有した上で、「学び合う」倖せを得る場所でなければなりません。子どもたちが輝き、共鳴し合う教室・学校が目標です。
Interview
ゼミの進め方や特徴などを教えてください
福江ゼミは、様々なチーム活動を通して「心が動く」情動を共有し、身体性を通した本音で語り合う「協働」を大切にしています。
毎年、3年次生は森の農園で野菜を育て、4年次生は地域の子どもとの交流活動を企画運営します。秋には3年次生の育てたサツマイモを3,4年次みんなで掘って、焼きいもデイキャンプ(?)と洒落込みます。春休みのゼミ研修旅行では、近年は奈良女子大附属小を訪問し、子ども主体の授業づくりを参観しています。
このように云うと毎年お決まりだと思うでしょう。けれど、個性的なメンバーが相互主体で活動を進めるので、なぜかどの年も、遊びのある変化に富んだ独自の活動になりますね。生き生きと走って行くメンバーを見守るトレーナーが私です。放牧場・時々トレセン(競走馬!?)です(笑)。
Interview
地域の課題と学びがどのようにつながっているかを教えてください
先ほど、「学びはつまるところ個々人のもの」と云いました。大抵は身近すぎて意識しませんが、学びには多かれ少なかれ「自分」という身体性を通じた、地域の課題とつながる何かがあります。それが例えば、能登の震災のような出来事や、もっと個人的な、「行動せざるを得ない」心揺さぶられることが起きたとき、パッとつながります。その際、自分と世界を「行動」で結ぶ近日点が地域であり、その先には広い世界があるのです。
“Think globally,Act locally”とはよく云ったものです。戦争をなくすとか世界を救うとか、そんな大それたものではありませんけど、それがいいのです。
ですので、この問いに関する個々の答えは、「あなたが自分で見つけてね」ということになります。てことで次回、大学編へ続く!!
Interview
大学生に学んでほしいこと、アドバイスなどをお願いします
「好きなこと最優先」で「自分事」として学び、「非認知能力」を磨け!ですね。
試験で計れる学力はざっくり「認知能力」ですが、それで倖せになれるほど人生単純ではありません。やる気、協調性といった心や社会性に関する「非認知能力」が自分を、世界を倖せにする必要条件です。
まず「好きなこと」にじっくり本気で取り組むことで、学びはちゃんと「自分事」になり、非認知能力はおのずから磨かれます。
確かに、世の中は他人事がほとんどですが、物事を自分以外のせいにするのは、「自分の人生のコントロールを手放すこと」と同じ。大学生活を通して、考え、行動し、自分大好きっ子になりましょうね。そして、それを元に、子どもたちを豊かに支える先生を目指してほしいと思います。
ちなみに、私が担当の授業、1年次「生活」でこれを体験的に学びますが、国語や算数より先に「生活科」を学ぶのは北陸一円でなんと!本学のみ。「教えることの巧みな先生」以前に「心のあったかい先生」を目指す皆さん、待っています!!
※撮影協力:北陸学院小学校
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